ジャズネット東京の理事の濱田篤郎の新著です。
実践的な内容で、各分野の専門家が執筆されており、
日本でトラベルメデイスンを普及させていくための、診療指針になる著書です。
海外渡航者の健康問題にかかわっている多くの方々に読んでいただければ幸甚です。
医療関係者だけでなく人事労務担当者にもお奨めです。
《評 者》尾内 一信(川崎医大教授・小児科学)
渡航者医療を簡潔に網羅したバイブル的書物。
ぜひ手元に置いて診療を
本書を手に取ってまず感じたことは,「日本で長く要望されていた渡航者医療を簡潔に網羅したバイブル的書物がやっと世に出た」ということである。本書は,実に素晴らしい出来栄えであるが,編集されたのが濱田篤郎博士なので納得できた。濱田篤郎博士は,現在日本渡航医学会の理事長として日本の渡航医学会でリーダーシップを発揮されている。また,労働者健康福祉機構海外勤務健康管理センターJOHACで長く渡航者健康管理に精通され,現在は東医大病院渡航者医療センター教授として教育者としても活躍されている。また,特筆すべきは,渡航医学の専門家でありながら著名な作家であるということである。
主な著作には,『旅と病の三千年史』文藝春秋,『伝説の海外旅行――「旅の診断書」が語る病の真相』田畑書店,『歴史を変えた「旅」と「病」――20世紀を動かした偉人たちの意外な真実』『世界一「病気に狙われている日本人」――感染大国日本へのカウントダウン』以上,講談社,『新疫病流行記――パンデミック時代の本質』バジリコなどがあり,いずれも思わず濱田ワールドに引き込まれる良書である。知らないうちに渡航医学の面白さが身近なものとなるので,これらの本もぜひお薦めしたい。
さて,本書は渡航地が途上国ばかりでなく先進国である場合も網羅し,短期滞在から長期在住まで,出国前ばかりでなく帰国後の対応までも初心者でもわかりやすく,しかも最新情報に基づいて解説されている。さらに海外で罹患が予想される疾患別,健常者ばかりでなくさまざまな慢性疾患,小児など渡航者別,渡航地域別にそれぞれ異なる視点でわかりやすくまとめられている。渡航者医療に関する情報は,慣れてくるとインターネットでも断片的に収集可能であるが,慣れないとなかなか必要な情報にたどり着けない。本書には,渡航者医療に必要不可欠な情報が整然とちりばめられている。渡航医学の専門家ばかりでなく,渡航者医療をこれから学ぼうと考えている先生にも役立つ有用な情報源に仕上がっている。特に普段渡航者の医療に慣れない先生は,ぜひとも手元において診療されることをお薦めしたい。
国際情勢は日々変化しており,これに伴って渡航者への対応も変化する。本書は出版されたばかりであるが,定期的に改訂されることを期待する。
A5・頁368 定価5,040円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01876-0